Y:ワークスペースの話

   この辺でちょっとイタリアのオフィスの話をしましょう。私が日本で勤めて
  いた設計事務所では、たくさんの建築家は窓や壁の方向を向いてデスクを
  並べるか、パーティションで前も横も見えないように区切って一人一人個別に
  働くようになっていました。ところがイタリアの設計事務所では、部屋の真中
  にものすごく大きなデスクがあって、皆そのデスクの好きなところに陣取って
  仕事をしていました。仕事の合間に顔を上げれば、向かいの人と目が合った
  り、その人が無関係な私の仕事を覗き込んで「もう少しそこを高くした方が
  いいんじゃない?」とか言ってくるのです。「ウワァ〜うっとおしい」と最初は
  思ったのですが、慣れてくるとこれがなかなか良いのです。他人の一瞬の
  感と言うのは結構的を射ていたりして、参考になります。こちらも仕事に疲れ
  ると他人の仕事を覗いて、意見を言い合って気分転換をし、そこからまた自分
  の仕事のアイデア発見できたりします。

  このデスクの使い方は、他人と
  ディスカッションし易く、一人で
  問題を抱え込むよりずっと早く
  良い形で解決できる事を知りま
  した。大きなデスクでなくても皆
  同じ方向を向いて仕事をする
  様なオフィスは見たことがありま
  せん。何処にも衝立等無い、
  広い空間の好きな場所にデスク
  を置いて、皆がそこら辺を歩き
  回って他人の仕事を覗いたり、
  話をしたり自由レイアウト出来るオフィスが殆どです。古い館などをオフィスに
  している会社では、建物に合ったアンティークなデスクを置いて、まるで
  ホテルのロビーの様にしたり、反対に超モダンなデスクでコントラストを楽しん
  だり、それぞれ個性があって魅力的です。一見能率の悪そうなレイアウトが、
  必死に書類とお見合いする孤独なブースより、実は仕事の高能率を実現する
  事を私自身イタリアで体験しました。

   

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